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<33>言葉かけは必要最低限に

2014年11月12日

 乳幼児期の子どもを持つ親に、「たくさん言葉をかけてください」と助言する専門家をときどき見かけるが、それは間違いである。
 「たくさん言葉をかける」と聞いて、皆さんはどのようなやり方を想像するだろうか? 多くの方は、言葉の量を増やすことをイメージするのではないかと思う。わが子の言葉の発達が遅く、どこかの発達相談でたくさん言葉をかけるよう指導された親たちをみていると、たしかに言葉の量を増やそうと努力している。ただ、実際の発言を書き起こすと、こんな感じである。「ほら、マーくん、みてごらん。ブーブーよ、ブーブー。かっこいいねえ」。この発言は、子どもには、ただの音の塊でしかない。
 言葉には「物事に名前を持たせる」という役割があるが、この四つの車輪がある物体は「ホラマークンミテゴランブーブーヨブーブーカッコイイネエ」という名前なのだろうか? しかし、次の機会に同じ物をみたとき、親の発言は「ブーブーだね。ほらマーくん、言ってごらん」などと、微妙に変化する。子どもは、結局その物体の名前がわからなくなってしまう。
 もうひとつ、言葉には「他の人にメッセージを伝える」という役割がある。一部の子どもは、大人がいつも大量の言葉を投げかけてくると、うっとうしく感じる。この場合、たくさん言葉をかけることが、かえって「他の人にメッセージを伝えたい」という子どもの自然な気持ちを萎えさせてしまう。名前を正確に覚えられないだけでなく、親とコミュニケーションを交わそうという意欲もうまく育たないのだ。
 乳幼児期の子どもには、言葉かけは必要最低限にとどめるのがよい。ただし、子どもとの関わりはむしろ増やすべきだ。小さな子どもたちが学びやすいのは、目から入る情報だ。耳から入る情報は、言葉よりもリズムのある音楽の方がわかりやすい。理屈っぽい言葉をたくさん並べることは避け、一緒に楽しく遊びながら笑いやリズムを共有する。子どもが何かに興味を示したら、その物の名前だけをシンプルに「ワンワン」などと言って聞かせるのである。子どもが何か言葉を発したら、その言葉を復唱する。それによって、自分の発した言葉に誰かが反応することの楽しさを子どもに感じさせる。
 言葉を教えこもうとするのでなく、他の人と一緒に過ごすことの楽しさを味わいながら、シンプルな言葉のやりとりを楽しむことが大切。そのためには、親の側にも「子どもと過ごす時間を楽しむ」という気持ちのゆとりが必要である。(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)
 =第2、4水曜日に掲載します