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<31>苦手なもの強要はNG

2014年10月08日

 人の好みはさまざまだ。だが集団活動では、個人の好みと関係なく皆が同じことをするように要請される場合もある。ふだん同僚と数人で昼食に出掛けるときは個々に料理を注文するのが普通だが、大人数で行う職場の忘年会では全員に同じ料理が出される。一部の人にとっては苦手な食べ物が含まれていることがあるが、そのようなときには当然残してかまわない。飲み物も同様で、飲酒したい人は飲めばよいし、アルコールが苦手であればノンアルコール飲料を頼めばよい。

 一方、人には、他の人に自分と同じことをしてもらいたいと思う傾向がある。自分が好きなことは、他の人にも好きになってほしい。だから、相手が嫌がっていても「慣れればきっと好きになる」と信じて、強く勧める。嫌いなことでも、自分も我慢してやっているのだから、相手にも同様に我慢してやってもらいたい。つまり、好きなものでも嫌いなものでも、とにかく自分と同じことをやってほしいのだ。

 勧められても嫌なら断ってよいはずだが、自分よりも目上の人から言われると断りにくい。勧める側も、目下には強く要求しがちで、断られると不機嫌になったりする。人によって好みは違うのだから、応じるか断るかは自由選択なのに、選択の余地を与えない雰囲気で迫る。これは、パワハラだ。かつては宴席で部下に嫌いなものでも食べさせたり、苦手なのに無理やり飲酒させたりする上司がいたが、そのようなパワハラを生んだ背景には、部下に自分と同じ体験をさせたいという上司の本能があったのだろう。日本は封建的な文化がまだまだ根強いが、さすがに近年ではこのようなパワハラを許してはならないという雰囲気になってきた。

 大人と子どもの関係ではどうだろう。子どもたちが学校で食べる給食も、個々の好き嫌いと関係なく、一斉に同じ料理が出される。嫌いなものでも食べさせようとする先生が今でも一部に存在するといううわさを聞くが、これはパワハラである。大人でさえ苦手なことを強要されるのがつらいのに、ましてや子どもではその苦痛は大人以上である。そんな簡単なことがわからないのだろうか。

 自分が好きなものでも、それを苦手とする人がいる。自分が嫌いなものが大好きな人もいる。自分とたまたま好き・嫌いが一致する人がいれば、そのことで共感しあえばよい。逆にかみ合わない人同士であっても、互いの気持ちは尊重しあう必要がある。大人が子どもに対しても、である。

 この話題は、次回に続く。

(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)
=第2、4水曜日に掲載します