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<30>子どもの言い分も聞く

2014年09月24日
ごめんなさい…

ごめんなさい…

 行動は心の中を映す、と一般に思われている。何か悪いことをしてしまい、誰かに迷惑をかけた時は、謝ることによって、反省と謝罪の気持ちを相手に伝えるのが一般的だ。実際には、相手に申し訳なく思っていても、いろんな理由で謝罪に踏み切れない人は多い。これは、多くの人が心情的に理解できる。一方、行動としては謝っているけれど、内心では相手に申し訳ないと思っていない人がいることは、意外に理解が難しい。
 「反省させると犯罪者になります」(岡本茂樹著、新潮新書)という本がある。悪いことをしてバレた人がまず考えることは、相手へのおわびの気持ちではなく、後悔と自分への言い訳だという。周囲は一刻も早く謝罪の言葉を言わせようとするが、それはかえって逆効果。心の中で何を考えていても、とにかく謝罪の言葉だけ述べれば自分への追及の手は緩む、という形だけを身につけるので、何度謝罪しても結局犯罪を繰り返してしまう。
 ここに書かれていることは、日常の子育てへの警鐘でもあると思う。子どもたちは大小さまざまな衝突を経験する。衝突する時は、互いに必ず何か理由があるものだ。しかし大人たちは忙しさにかまけて、理由をじっくり聞くことはせず、謝罪という行動だけをとらせようとする。子どもたちは、「ごめんなさい」の一言さえ言えば嫌な時間が終わることを学ぶ。
 「反省させると~」に書かれているもう一つの重要なことは、相手の気持ちを考えさせることではなく、自分がどう思っていたかの振り返りから始めるということである。どんな犯罪行為でも、捕まった瞬間は、何らかの言い分を述べ、それを正当化しようとする。その時に考えたことを後からじっくり振り返るプロセスの中からはじめて、真の反省の気持ちが自発的に生まれてくるという。
 子どもの衝突でも同じ。自分にも言い分があるのに、大人から謝れと一方的に言われても、納得できず不全感が残る。自分の言い分を十分に話した時にはじめて、相手の立場について考え始めることができ、なぜ自分にも非があると大人が考えたのかを冷静に振り返ることができる。
 形の上の行動だけをとらせることばかりやっていると、表面的にはうまくいっているようで、実は子どもの心の内面に深刻な矛盾が蓄積していく恐れがある。何か問題が起こった時は、すぐに行動をとらせるのではなく、じっくりと子どもを話し合い、子どもの言い分を聞いておきたいものである。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)
 =第2、4水曜日に掲載します