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集いの場で
見えないけれど、ここにいる
居場所求める切実な声

2014年8月17日
約100人が詰め掛けた、ひきこもりをテーマにした講演会。席が足りずに立ち見の人も=甲府・県立図書館

約100人が詰め掛けた、ひきこもりをテーマにした講演会。席が足りずに立ち見の人も=甲府・県立図書館

 送り盆の16日、甲府・県立図書館の交流ルームに、ひきこもりの当事者と家族らが次々と入っていった。ひきこもりの取材を続けるジャーナリスト池上正樹さんによる本人同士の交流会と、全国引きこもりKHJ親の会(池田佳世代表)による保護者への相談会が開かれていた。
 ひきこもりの男性 「山梨では悩みを打ち明けられる場所がなくて、苦しかった」
 ひきこもりの子を持つ親 「誰にも相談できなくて…」
 周囲に理解されない苦悩を、それぞれ絞り出すように吐き出す。
 その後始まった池上さんと池田代表の講演会には100人近くが詰め掛け、急きょ席を追加した。
 「誰もがひきこもりになり得るんです」「子どもの気持ちに寄り添う姿勢が求められています」。2人の発言に耳を傾け、熱心にメモを取る参加者たち。世間と隔絶され、「居場所」を探し求める切実な願いが色濃く浮かんだ。

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 ある日を境に、部屋や家から出られなくなり、家族以外との交流ができなくなる「ひきこもり」。インターネット上の百科事典「ウィキペディア」英語版に「Hikikomori」と掲載されるほど、言葉は広く認知されている。だが、その実像は正しく伝わっているだろうか。
 「ひきこもり」について、厚生労働省は「仕事や学校に行かず、家族以外とほとんど交流せずに6カ月以上自宅にひきこもっている状態」と定めている。しかし、定義は複数存在する。実数も不明だ。内閣府は推計値として「全国70万人」としているが、対象年齢は15~39歳で、問題となっている中高年のひきこもりはカウントしていない。
 なぜ、ひきこもってしまうのか。学校でのいじめや挫折の体験、職場の人間関係によって、外に出られなくなってしまう人もいれば、発達障害や統合失調症が関係していることもある。ひきこもりの期間が長引き、「自分でも、どうしてこうなったのか分からない」というケースもある。
 学校や職場、地域とつながる“普通の暮らし”を送っている人たちの目に、ひきこもる人の姿は入らない。見えないから、問題になりにくい。
 ひきこもりは、高齢者の介護や人口減、地域の衰退にも影響を与えかねない。個人や家族の領域にとどまらず、社会の問題に広がりうる。だが、政治も行政も、積極的にひきこもりの問題に立ち入ろうとはしない。公共機関が出向いて支援する「アウトリーチ」が必要、と言われて久しいが、実践はごく一部にとどまっている。

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 ひきこもりは特別な人の特異な現象ではなく、誰もが突然陥る可能性がある。自分の身でありながら思い通りに動けない本人の焦り、「怠けている」「甘えだ」と世間に切り捨てられて誰にも相談できない家族。有効な手だてがないまま時間だけが過ぎていく。ひきこもる人々と社会との間には、重い扉が存在する。
 その扉を開くために、本人や家族はどうすればいいか。周囲は何ができるのか。連載では、ひきこもりについて、その実態や関係者の苦悩、問題の影響、支援の現状とあり方を探っていく。扉の向こうへ、一歩を踏み出すために。
(9月から連載を始めます)
〈「扉の向こうへ」取材班〉

 この企画へのご意見や感想をお寄せください。郵便番号400-8515、甲府市北口2の6の10、山梨日日新聞社編集局「扉の向こうへ」取材班(ファクス055・231・3161、電子メールkikaku@sannichi.co.jp)。交流サイト「フェイスブック」の本紙公式ページ(http://www.facebook.com/sannichinews)、短文投稿サイトのツイッター(@sannichi)でも情報を発信しています。