50代男性。妻に大きないびきを指摘されて受診したところ、睡眠時無呼吸症候群と診断されました。マウスピースで治す方法があるそうですが、詳しく教えてください。
回答者 市立甲府病院歯科口腔外科 藤井 英治医師
軽度から中等度で効果 安価で持ち運びが便利
-睡眠時無呼吸症候群とは。
睡眠中に呼吸停止を繰り返す病気です。具体的には、睡眠中に10秒以上続く無呼吸が、1時間に5回以上現れると睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されます。大きないびきや睡眠中の呼吸停止を家族に指摘されて気付く場合もありますが、日中に我慢できないほどの眠気に襲われる、朝起きた時に疲れが残って頭がスッキリしない、といった自覚症状があります。集中力の低下から交通事故を引き起こすケースもあり、社会的な問題ともなっています。
-原因は。
9割以上は鼻から喉へと続く上気道が閉塞することによって生じます。その原因は、アデノイドやへんとうの肥大、睡眠中に筋肉が緩んで舌の付け根が落ち込んでしまう舌根沈下です。肥満やあごが小さい人はなりやすい傾向にあります。
-患者数はどのくらいですか。
一般的に2千万人の日本人がいびきをかき、そのうち1割の200万人がSASと推定されています。いびきをかくのは上気道で空気の流れが障害されているサインです。酸素不足が恒常的に起きているため、高血圧や心臓病を引き起こす可能性もあります。「たかがいびき」と高をくくらず、早めの受診をお勧めします。
-治療法は。
軽症であれば減量、飲酒の制限などの生活習慣の改善でよくなるケースもあります。重症になると、睡眠時に圧力をかけた空気を鼻から送り込んで気道を広げる経鼻的持続陽圧呼吸療法(NCPAP)を行います。症状が軽度から中等度の人にはマウスピースを装着する方法も効果的です。
-マウスピースについて詳しく教えてください。
スリープスプリントと呼ばれるアクリル性のマウスピースで、睡眠時に下あごを数ミリ前方に出して固定することで気道を広げることができます。歯形の石こう模型の上に厚さ2ミリのアクリル板を圧接して作ります。装置を上下片方ずつ就寝時に付け、異物感に慣れたら、どの程度下あごを前方移動できるかを確認します。最大距離の半分程度(通常5~6ミリ)下あごを出した状態で上下の装置を固定し、効果を見ながら調整します。
-費用は。
内科でSASと診断を受けた場合のみ歯科の保険適用となり、3割負担で7500円程度です。耐久年数は3~4年。大きな装置が必要なNCPAPに比べて安価で持ち運びが便利なのが特徴で、旅行先や出張先でも治療を継続することができます。