2007年11月14日(水)
講演会・インタビュー 講演・甲州種ワインの可能性 英国のマスター・オブ・ワイン リン・シェリフさん
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海外の市場開拓に向け、英国をはじめとしたヨーロッパ市場のワインの動向などについて学んだ講演会=甲州・勝沼中央公民館 |
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リン・シェリフさん |
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ワイン業界の世界的権威「マスター・オブ・ワイン(MW)」の称号を持つ英国在住のリン・シェリフさんがこのほど来日し、ヨーロッパ市場のワインの動向や海外の市場開拓に向けた具体的な方法について講演した。甲州市勝沼町内の会場には県内のワイナリー経営者ら約五十人が集まり、基幹品種の甲州種ワインに秘められた可能性を軸に、県内産地の将来戦略を探った。
●世界の流れ
シェリフさんはまず、「倫理」「実用性」「健康」「喜び」の四つの言葉を挙げ、「これからヨーロッパの市場を獲得しようとするワインにとって、この中の少なくとも二つ、理想的には四つを兼ね備えていることが、成功するための重要なポイントとなる」と言及。世界的に健康志向の流れがあることや実用性の高いスクリューキャップが注目されていること、ワインである以上喜びをもたらすものでなければならないことを説明した。
世界最大市場の英国では「フルーティーでアルコール度数が低く、気軽に飲むことのできるスタイルのワインが人気」で、白ワインの消費が伸びている。英国市場における各国のワインの成長率を示したグラフを見せながら、イタリアとニュージーランドのワインの成長率の高さに注目し、「白ワインに由来したものである」と話した。
英国市場は、小売店向け取引の「オフトレード」と飲食店向きの「オントレード」に分かれていて、オフトレードでの白ワインの平均価格は約四ポンド。日本円では約千円となり、比較的安価だが、「最近は六−七ポンド、それ以上の価格のワインの消費が伸びていて、消費者がより高価なワインにお金を払う習慣ができている」
シェリフさんは「日本のワインを海外に持っていくときも価格を安くしすぎず、品質に合った価格設定をする必要がある」と強調し、専門的なワインショップにしぼることが、英国市場で甲州種ワインが成功するポイントになることを説明した。
●北欧の消費動向
英国同様、ワイン生産国ではないノルウェーやスウェーデンでもワインの消費は伸びている。十年前は赤ワインが主流だったが、今は白ワインに移行。特にノルウェーではアジア料理店が増えていて、それに伴って白ワインの消費量が伸びていると考えられている。「裕福な国なので、今後甲州種ワインにとって面白い市場になるだろう」
一九八○年代には大量生産製品として知られていたニュージーランドのワイン。だが今や、英国では最も高い価格帯で取引され、ヨーロッパのほとんどの市場で同様の傾向にある。
シェリフさんは「ソーヴィニヨン・ブランに由来した、軽く、アルコール度数が低くて、気軽に飲めるタイプのワインであることが評価を受けている」と解説。「オフトレードでのシェアはたった1・9%だが、市場の中では評価できるポジションを獲得している」と紹介した。
●山梨のビジョン
「山梨は降水量の多さや湿度の高さなど、気候的にワインの産地として難しいのは明らか」。だが、オーストラリアやニュージーランド、南アメリカの一部の地域は似たような課題に取り組み、これらの問題を克服し、世界市場において成功を収めている。シェリフさんは「山梨もその可能性がある」として、(1)戦略的なビジョンを持つこと(2)的をしぼって行動すること(3)計画に向かって努力し続けること−の重要性を強調した。
具体的には、三年計画で海外の市場を開拓。一年目に補糖や濃縮などEUのワイン法をクリアし、影響力の大きい英国の報道機関に甲州種ワインを紹介、二年目にはロンドンで試飲会を開き、オントレードや報道機関を対象に産地視察を受け入れる。三年目には甲州種ワインと食事の相性を味わってもらう食事会を大使館で開き、引き続きオントレードや報道機関へのプロモーションを行うことを提案した。
シェリフさんは「消費者の動向や関心は、アルコール度数が低く、食事と一緒に楽しめるワインに向いている。新しく市場に参入するワインは、適切な戦略と予算を持って臨むことで、短期間で望んでいるポジションを獲得することができる」と結んだ。〈山梨日日新聞記者・平島 由梨〉
〈リン・シェリフさん〉
ロンドンを拠点に、ワイン取引のあらゆる分野(生産、ブレンド、国際市場を通じた購入や取引協定の締結)に精通するコンサルタントとして世界的に活動。アパルトヘイト廃止後の南アフリカ産ワインの市場開拓や品質向上に貢献したほか、スペインワインのマーケティングで活躍。2004年からはアジア最大規模の国際ワインコンクール「ジャパン・ワイン・チャレンジ」のパネルリーダーとして、甲州種ワインの審査に携わっている。52歳。
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