2009年8月27日(木)
連載・選択の夏 第4部「地域から問うマニフェスト」 【5】 地方分権 「移譲」後の将来像見えず 財源確保、自治体に不安
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厳しい財政運営を強いられている山梨県内の市町村。各政党のマニフェストからは、地方財政の充実に向けた具体的な制度設計はみえない(コラージュ) |
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今月上旬、富士吉田市の中期財政計画(2008〜12年度)を見直すため、堀内茂市長ら幹部が市役所の一室に集まった。当初計画に盛り込んだ事業の先送りや廃止など「最終判断」が市長に委ねられたのは計88事業。重度心身障害者を対象にした福祉手当給付事業の廃止案に、市長は「そこまで切るのか」と異を唱え、結局、長寿祝い金を圧縮するなどして財源を捻出ねんしゅつ、福祉手当継続が決まった。
不況で税収減少
中期財政計画は市長の公約に基づき昨年9月に策定したが、ほぼ同時期に米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻はたん。世界同時不況の影響が広がったこともあり、12年度まで63億〜64億円台で推移すると見込んだ地方税は60億円を割り込むなど大幅な歳入減となる見通しで、計画見直しを余儀なくされた。
見直しに向け、市企画財政課が各課に配布した文書には「『あれもこれも』から『あれかこれか』という経営判断を」との文字。「見直しは、計画策定時にさんざん絞った事業をさらに絞り込む作業。もう一滴も出ないところまで来ている」(同市)
小泉政権で進められた国・地方財政の三位一体改革(04〜06年度)は国庫補助負担金の削減、地方交付税改革、地方への税源移譲をセットで行う内容。改革の理念は歓迎されたものの、税源移譲が不十分なまま交付税削減が先行したことで地方の財政運営はぎりぎりのかじ取りを迫られているのが実情だ。
こうした状況を踏まえ、衆院選では三位一体改革後の地方財政の立て直し策が争点の一つ。自民党はマニフェスト(政権公約)で、補助金や交付税、税源配分の見直しなどを含めた「新地方分権一括法案」を本年度中に国会に提出し、成立を目指す方針を掲げる。
民主党は「国から地方への『ひもつき補助金』を廃止し、基本的に地方が自由に使える一括交付金を交付する」との方針。
だが両党とも具体的な制度設計には言及していない。富士吉田市の交付税は三位一体改革で年間30億円となり、ピークの2000年度から10億円以上減少。堀内市長は「財源手当は大丈夫かと疑いたくなる。財源確保の明確なビジョンを示すべきだ」といらだちをにじませる。
過疎地域が埋没
一方、松沢成文神奈川県知事らは7月、道州制導入のための法整備をマニフェストに盛り込むよう要望書を自民、民主、公明の各党に提出した。横内正明山梨県知事も「道州制は、国から地方への権限移譲の促進につながる」と賛同した。
自民党はマニフェストで、道州制基本法を早期に制定し、制定後6〜8年をめどに制度を導入をする方針を掲げている。民主党は明確なスタンスを盛り込んでいないが、「霞が関」を解体し地方自治体の強化をうたう。共産党は「地方の一層の疲弊と地方自治体の形骸けいがい化をもたらす」として道州制には反対だ。
ただ自民、民主とも、マニフェストには各自治体にどんな権限を移譲するのか明確には示していない。「道州制の議論はまだ尽くされていない。このまま道州制に移行すれば過疎地域や小規模町村は完全に埋没する」と早川町の辻一幸町長は話す。
山梨学院大法学部の江藤俊昭教授(行政学)は「各政党が、地方分権に関する政策を重視する姿勢は前回衆院選より高まっているが、内容が十分詰め切れておらず、分権の将来像が見えにくい。イメージ先行ではなく、実態に即した地に足の着いた議論をしてほしい」と指摘している。〈衆院選取材班〉
(おわり)
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