2009年7月29日(水)
企画・私の見方 A 長田 忠孝さん (飯富病院長) 医療の破壊 断ずるとき 地域の医師確保策注視
 |
おさだ・ただよしさん 身延町早川町組合立飯富病院長。1982年から同病院に勤務し、高齢化が進む峡南地域での在宅医療も実践してきた。昨年、峡南地域の公立病院の統廃合に反対する提言を、地域の公私立病院長とともにまとめた。身延町飯富。64歳。 |
|
[有権者の意識]
前回の衆院選で国民は小泉純一郎元首相に熱狂し、自民党の大量議席獲得は、その後の安定的な政権運営をもたらした。だが強いリーダーシップを持っていたという印象だけで、結果的に成果があったと評価できる点はないと受け止めています。
その後、安倍晋三元首相、福田康夫前首相、麻生太郎首相の3代にわたり選挙という洗礼を受けることなく選ばれてきました。最高権力のたらい回しは前回衆院選後、特に顕著で、私たちの手で国のリーダーを選べないことほど不幸なことはないと考えます。
[「小泉改革」後の政策]
前回衆院選以降、医療現場にとっては大変な4年間でした。小泉政権以降の「骨太の方針」は、歳出削減を目指して社会保障費の自然増を年間2200億円抑制する方針を掲げてきました。これは医療現場のことをまったく理解せず、ただ全体の財政支出の帳尻を合わせるためだけの政策であると厳しく断じざるを得ません。
いま、医療の現場では医者や看護師が、介護の現場では介護士が、圧倒的に足りない。特に医療現場では社会保障費の抑制や診療報酬のマイナス改定により病院の経営を圧迫してきました。結果的に医師不足を招き、地域医療を壊滅的な状況に追い込んだと言ってよいでしょう。
社会保険鰍沢など峡南地域の病院では医師不足に悩まされ、十分に患者の受け入れができず、収益が減るという悪循環が続いています。国のガイドラインに基づき、峡南地域でも公立病院の統廃合論議が進められたが、整理統合では何一つ良いことはありません。それぞれの病院が地域医療の核であり、どう充実させるか考える方が先決です。
[選挙の焦点]
麻生政権の是非や政権交代が最大の焦点になっていて、自民党、民主党のどちらかを中心とした政権を選択するというのが注目されがち。しかし私は、この4年間に改革と称して行われた政策に対する評価を下す選挙だと思います。
足りない人手を補おうと、正規の勤務時間を超過して働いた後、当直をこなし、そのまま日勤に戻るという異常な勤務を続ける地方の医師もいます。私自身もそうした毎日を送ってきました。自己犠牲を払ってまで働いている医療現場では、社会保障費を削減するという発想はとても理解できません。
政府与党は社会保障費削減のスタンスをようやく転換したが、政権を維持した場合もそうした姿勢を保ち続けることができるのか。一方で、民主党主導の政権になった場合も手厚い社会保障政策を展開できるのかは未知数。病院の再編を考える前に医師確保策や地方への配置、さらに地方病院の経営をどう支援していくのかを考えてほしい。
[求められる政治家像]
医師や看護師不足に対し、どう財政的な裏付けを行い、対応していくのかそれぞれの主張に注目したい。医師をどう地域に配分していくか、明確なビジョンを示すことも重要です。病院などが一時的に医師の派遣を受けるなど場当たり的な対応では、住民の安心にはつながりません。
現場の実態を知ろうとしない官僚の体質も政治主導で転換してもらいたい。政治家には医療だけでなく、社会的に弱い立場に置かれている人たちにもいま以上に目を向け、誰もが安心して暮らせる社会づくりに尽力してほしい。
〈聞き手・宮崎 大樹〉
|
|