2007 夏の甲子園 がんばれ甲府商業
甲府商 古豪復活への道【下】
 勝負強い打線 状況に応じ個々が役割 チーム打撃の意識浸透
2007年8月2日掲載
 決勝戦の四回裏、2点を追う攻撃は二死二塁。ここまで甲府工のエース石合翔の前に苦しんでいた打線がいきなり爆発する。三塁打、二塁打、単打、二塁打と4者連続適時打で一気に逆転。好機につながる。たたみ掛ける。今夏の甲府商打線を象徴するようなシーンだった。
 準優勝した今春の関東大会では違った。四球や安打で好機をつくっても適時打が出ず、苦戦を強いられた。4試合の総得点は10、1試合平均は2・5点。2回戦の足利工大付(栃木)戦は2−1、準決勝の慶応(神奈川)戦は2−0と、いずれもエース米田易弘の力投で辛くも逃げ切るパターンだった。夏の厳しい戦いを見据え、「打力の向上」が最大のテーマとなった。

1点にこだわる
 関東大会終了後、新しい打撃練習用マシンを購入。通常は数カ月で取り替える部品が1カ月で消耗するほど、室内練習所でフル稼働させた。主力は通常の練習メニューに加え、1日200から300球を目標に打ち込み、バッティングに磨きをかけ、打力は着実にアップした。
 米田がけがの治療のため、練習試合の登板を回避したことも打線の奮起、意識改革につながった。布施正臣監督は「点を取られるので、取ることを意識しなければならない。接戦では、終盤に勝利を決める1点を取ることにこだわった」と振り返る。1点の重さを感じることで、1打席への集中力も高まった。

意思の疎通重視
 「9人で1人の投手と対戦する。1人に責任を負わせない」(布施監督)。つながる打線の最大の要因は、布施監督が言う「チームとして仕事をする」チームワークにあった。  昨秋の県大会終了後、ミーティングを増やし、意思の疎通を重要視した。練習メニューは監督が口頭で伝えるのではなく、ホワイトボードに書き込み、選手個々が次に何をすべきか判断し、準備する方法をとった。
 「目的を持ち準備する」(布施監督)ことが実際のプレー、打撃に役立った。打者は簡単にアウトになるのではなく、粘って相手投手の球数を増やす。次の打者は制球が甘くなったところを狙う。走者は投手に重圧をかけ、変化球が投げにくい状況をつくる。前の打者が変化球をしつこく狙えば、次は変化球が投げにくくなる−。
 次の打者は前の打者のメッセージを受け取り、自分の打席に生かす。「夏の大会は、大観衆で声が届かなくても身振り手振りで選手が作戦を理解してくれた。言葉のない会話ができた」と布施監督は言う。一人一人が自分の仕事をきっちりこなす。それがつながることで大きな力を生んだ。
 44年ぶりとなる夢舞台の開幕まで1週間を切った。布施監督は「背伸びはしないで一戦一戦を頑張るだけ。挑戦者の気持ちで臨む」と引き締める。全国の強豪校を相手に小さな力を結集させたチームが、新しい伝統の一歩を踏み出す。

チーム一丸となった戦いで44年ぶりの甲子園切符を手にした甲府商ナイン=小瀬球場(7月28日)
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