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<36>本当の自立とは何?

2014年12月24日

 多くの親たちにとって、子育ての目標の一つが「自立」であることは、間違いない。
 発達や心の健康に何らかの問題があって受診してくる子どもたちの親から、「この子は将来自立できるのだろうか?」という質問をよく受ける。「自立とは何ですか?」と問うと、「誰の援助も受けず1人で生きていけるようになること」という答えが返ってくることが多い。発達や心の健康の問題は自立を阻むのではないかと親は焦り、一刻も早く克服させようと考えがちだ。しかし、今の世の中に、誰にも頼らず完全に1人で生活している人なんて、まずいない。ほとんどの人は、何らかの形で他の人に助けてもらいながら生活している。人の個性や能力は多様であるから、援助の必要度に個人差があるのは当然である。どんな世の中であれ、相対的に援助の必要度が高い人たちも、それほど援助を要しない人たちも、一定の割合で存在する。
 大事なことは、おのおのの個性や能力に応じて、自分でできることとできないことを判断する力を育てること、そして、できないことについて他の人に援助を求める力を育てることである。前者は「自律スキル」である。読み方は同じだが、何でも自分でやるという意味の「自立」とは異なり、「自分を知り、自分の個性や能力を上手に発揮する力」である。後者は、以前にこのコラムで取り上げたことがある「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)につながるソーシャルスキルである。
 「ホウレンソウ」の力を育てていくには、幼少時の「駄々をこねる」行動を大事に育てていくことが重要であることは以前に述べた。一方、自律スキルを育てていくために大事なことは、得意なことや好きなことを思う存分できる環境を保障することである。得意なことや好きなことをやることで、自信と意欲を育てながら自分の力とその限界を判断する力も身についていく。苦手なことの克服ばかりを目指していても、自信と意欲は育たない。
 たとえ心身に病気や障害があっても、自分にできることは着実に行い、できないことは誰かに相談できれば、本人も周囲の人たちもストレスなく生活できる。逆に、どんなに能力が高くても、1人でやりきれないほどの仕事を抱え込んで、誰にも相談せず最終的に失敗してしまうと、本人の心の健康が損なわれるだけでなく、周囲の人たちも困ってしまう。
 本当の自立とは、自律スキルとソーシャルスキルをバランスよく発揮できることであることを、ぜひ知っておきたい。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)
 =第2、4水曜日に掲載します