2005年08月01日 第81号


県立博物館、10月開館へ準備進む
注目される「費用対効果」




 山梨県立博物館のオープンまで3カ月を切り、収蔵資料の整理や施設の内装工事などの準備が急ピッチで進んでいる。開館時期が秋の観光シーズンに重なることから、オープニング企画も多数用意し、スタートダッシュをかける構えだ。一方、建設をめぐって知事選の争点の一つとなるなど県民の間でも賛否が分かれたこともあって、今後の運営への注目度も高い。財政事情が厳しい中、120億円以上の建設費をかけた県内最大の箱物施設であり、投資に見合う集客や利用が課題となっている。

 「資料整理はほぼめどが立ち、施設工事も順調。十月十五日には満を持してオープンを迎えられそうだ」。遠山和男副館長は、準備状況に自信をみせる。

 設備で残るのは体験コーナーや常設展示室などの内装工事や情報システム整備。八月末までに終了し、九月には展示物の配置作業に移る予定だ。

19万3915点収蔵
 収蔵資料は現在、十九万三千九百十五点。このうち購入品は「甲府道祖神祭幕絵」(約六千八百万円)や「法然上人絵伝」(約九千万円)など三千百四十一点(計約三億二千万円分)。県所有で県立図書館が所蔵してきた「甲州文庫」など江戸時代以前の古文書類約九万点も移管を終えた。

 展示の目玉として位置付ける国宝「楯無の鎧(よろい)」(塩山・菅田天神社所蔵)の複製品の製作も進む。来年三月の特別展で公開予定だが、移動が困難とされる実物も、「一定期間の展示協力に理解を得られている。競演展示も検討中」(同博物館)と力が入る。

 博物館の調査や整理作業の紹介、収蔵品のゆかりの地ツアー、博物館周辺の史跡訪問…。二○○三年度から始まった県民参画事業の開催は約三十回を数え、博物館に対する期待感の醸成も図ってきた。

年4億の県費
 建設に約百二十三億円かけた博物館の運営費は年間約四億五千万円。県教委が見込む収入は開館期間が約五カ月と短い本年度(常設展)は八百−九百万円、来年度は千八百万円程度で、年間四億円以上の県費が投入される見通しだ。

 目標入館者数は年間十万人。「全国の博物館の平均や周辺が観光地であることを加味して試算した」(同博物館)としている。

 これに対し県立美術館は昨年度一年間で約十九万五千人が訪れた。甲斐市内の会社員(40)は「財政が悪化する中で、博物館には莫大(ばくだい)な金がかかっている。造った以上は、既存の文化施設より多くの人の利用がなければ納得できない」と、費用対効果に厳しい目を向ける。

 一方、文化学習拠点としての機能の充実も求められている。評価方法や運営の在り方を検討した第三者組織「みんなでつくる博物館協議会」の委員長を務めた小沢龍一さんは「教育や文化的側面で博物館が担う『無形の使命』を忘れてはいけない」と強調。「訪れた県民がいかに知的高まりを感じることができるかが重要」と指摘している。

 今後の運営について、遠山副館長は「財政難の中、低予算で魅力ある企画を打ち出すなど職員で知恵を絞り効率的な運営をしていきたい」と話している。

 

用語・県立博物館
 故天野建前知事時代の1994年に「幸住県計画」に位置付けられて具体化。9市町村の誘致合戦を経て2000年8月に旧御坂町成田(現笛吹市)に建設地が決定。基本計画では2期に分けて整備し、約123億円を投じて02−04年に建設した現施設(延べ床面積約8760平方メートル)は1期分。「山梨の自然と人」をテーマとし、歴史に重点を置いた参加体験・交流型の博物館。県内文化施設のネットワーク連携を図る「ハブ博物館」としての機能も持たせている。

(写真)
10月15日のオープンに向け、急ピッチで工事が進む常設展示室=笛吹市御坂町成田の県立博物館

山梨日日新聞  2005年(平成17年) 07月17日


Copyright 2005 山梨日日新聞社 THE YAMANASHI NICHINICHI SHIMBUN.